「小学校が合わないから中学受験」は本当に救いになるのか? 敏感な娘の通塾で気づいた親の盲点

YouTubeのPIVOTで配信されていた「中学受験うちはやめました」という動画を見た。

経済学者の安田洋祐さん、教育経済学者の中室牧子さん、弁護士の山口真由さんらが、中学受験の過熱や「努力は夢中に勝てない」本質について語り合っていて、深く頷く場面がいくつもあった。

この動画を見て、かつて娘と経験した「中学受験の挫折」について書いてみたいと思う。

いわゆるHSP気質や、グレーゾーンの自閉傾向があり、
大人しくて敏感なタイプのお子さんを持つ親御さんにとって、
わが家の失敗や気づきが少しでも何かの参考になれば幸いだ。

目次

勉強は得意だった娘。「公立が合わないなら私立へ」という思い込み

幼児教室に通っていた娘は、小学校低学年の頃、勉強の飲み込みがかなり早い方だった。
小1で国語なら小学5年生レベル、算数など他の教科も2学年ほど先の内容を
すんなり理解していたと思う。

けれど一方で、公立小学校のあの独特な騒がしさや刺激の多さに、娘はどうにも馴染めないでいた。

「勉強は得意そうなのに、今の環境は刺激が強すぎてかわいそうかもしれない」
「それなら、落ち着いた環境で学べる私立中学を目指した方がいいのでは」

そう考えた私は、娘が小学2年生の春から、中学受験に向けて塾に通わせることにした。

手厚さを期待した「全員社員講師」の塾で起きたこと

選んだのは、大手の大規模塾ではなく、
難関校対策を掲げる少人数制の進学塾だった。

学生のアルバイト講師ではなく、全員が正社員のプロ講師で授業を回しており、先生の異動も少ない。

「ここなら手厚く、一人ひとりをちゃんと見てくれるはず」と期待したのだ。
家からのアクセスが良かったことも決め手だった。

けれど、その塾が娘にとって安心できる居場所になることはなかった。

教室には、いわゆる「お山の大将」のような意地悪なリーダー格の女の子がいて、
娘だけが無視されるような空気があった。

さらに担当の先生も厳しく、低学年の女の子特有の繊細な人間関係や
心の機微を汲み取るような配慮は一切なかった。

親として相談もしてみたけれど、親身な声掛けや改善はなく、状況は変わらなかった。

結局、娘には合わず、小4の終わりでやめることになった。

「解法のプロ」と「子どもの心を通わせるプロ」は違う

今になって冷静に振り返ると、
中学受験の専門塾で教壇に立ち続けている先生たちの特性について、
考えさせられる部分がある。

もちろん全員がそうではないけれど、
彼らは「中学受験という特殊な学問を解かせるプロフェッショナル」ではあっても、
「子どもの心を通わせ、その子の特性に合わせて導く教育者」ではないのだ。

解法を上から授ける技術はあっても、
傷ついている子どもの心に寄り添うようなコミュニケーションは専門外だったのだと思う。

「正社員の専任講師だから安心」と思い込んでいたけれど、
今思えば、むしろ学生のアルバイト講師の方が良かったのかもしれない。

適度に肩の力が抜けていて、責任を背負い込みすぎず、
年齢も近いお兄さん・お姉さんのような先生の方が、
繊細な子どもにとっては構えずに心を許せる場合もあるからだ。

(もっとも、先生をシビアに選ぶタイプの娘のことだから、学生講師だったとしても結局はダメだった可能性の方が極めて高いのだけれど……。)

途中でフェードアウトして、結果的に正解だった

結局、娘が「行きたくない」と言い出して
フェードアウトするように塾をやめたのだが、あれは結果として大正解だったと思っている。

先生との相性にここまで左右されてしまう娘が、
もし無理をして受験を乗り切り、どこかの私立中学に進学していたとしても、
高確率でどこかで通えなくなっていただろうからだ。

私立に入ったからといって、手厚い配慮が受けられるかどうかは、
実際に入学してみるまで分からない「完全な賭け」でしかない。

SNSを見ていると、過酷な受験を乗り越えて私立に入ったものの、
学校の管理や人間関係に馴染めず不登校になってしまう子の話を本当によく見かける。

環境を変える前に、子どもの「特性」を見るべきだった

あの頃の私は、
「今の小学校が合わないから、娘に合う私立中学校を探してあげよう」
と、外側の環境を変えることばかりに必死になっていた。

けれど、本当に向き合わなければならなかったのはそこではなかった。

「なぜ娘は小学校の空間がしんどいのか」という、娘自身の敏感さや、
少しグレーがかった自閉気質、
いわゆるHSPのような「気質そのもの」をもっと深く理解することだったのだ。

これはあくまで、わが家の娘という一人の子どもの体験談にすぎない。

けれど、繊細で傷つきやすい気質を持った子にとって、
中学受験という過酷な競争システムや、その先にある私立中という環境は、
親が思う以上にハイリスクな選択肢になり得るのだと、今なら痛いほど分かる。

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