親の優しさが裏目に出た時のブレない境界線の引き方

スクリーンタイムの制限をかけて数ヶ月。
スマホの使い方自体は自分でやりくりできるようになり、
一時の激しいパニックは落ち着いたかに見えていた。

けれど、これで一件落着……とはならない。
親が少しでも優しさを見せたり、予定へのプレッシャーが重なったりすると、
忘れた頃に3歳児のような「幼児退行の爆弾」が投下される。

予定へのプレシャーといっても、本当に小さなことなのだ。
明日、どこかに出かける予定がある、とかその程度のこと。

これは、ある夏の夜に起きた、理不尽極まりない深夜の記録。

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【事実】深夜3時半、聞こえた娘のぐずぐず

前日の夜は蒸し暑く、私はあまり眠れていなかった。
今夜こそは朝までぐっすり眠りたいと思い、耳栓をしてベッドに入っていた。

ところが深夜3時半。
耳栓を貫通して、どこからともなく「うぉーん、うぉーん」という叫び声が響いてきた。

最初は別の部屋で夫が映画をつけっぱなしにしている音かと思った。
隣で寝ていた猫が暑いのにピタッと寄り添いながら、ピンと耳を立てて警戒している。

はっきり目が覚めてからあらためて聴くと、娘の声だった。

娘は3日ほど前から、
「あれもやれなかった」「夜になると何もできない気がする」とぐずぐず言い始めていた。

夜になると、できなかった後悔が襲ってきて自己嫌悪に陥るらしい。

普通の人であれば、罪悪感を感じるなら明日やるか、
などと思って済む話であるが娘は違う。

自分が気の済むまで引きづり
話す相手が私しかいないため、愚痴をぶつけてくる。
真剣に聞いても何の解決にもならないことは
今までの経験で済みである。

適当に流すと面倒くさいくらい絡んでくる。

こういう時は共感性を発揮するのが大事で
「大変だね〜」
「でもいつも夜になるとそうだよね」
「私も心当たりがあるけれど、夜ってそういうものじゃないの?」
そうやってたいしたことがないと言う風に装い、同じ言葉を繰り返して受け流す。

毎日同じことを繰り返しているのだから、学べばいいのにと思う。
けれど、本人は自分のネガティブな感情に翻弄されていて、
そこまで気が回らないのかもしれない。

【原因】外出の不安と、裏目に出た私のハグ

そんな精神状態に加えて、
翌日には夫と娘は、映画『Michael/マイケル』を観に行く予約が入っていた。
「行けなかったらどうしよう」というプレッシャーと心配が募っていたのだと思う。

その外出プレッシャーに加えて、
「お風呂に入ろうとして寝落ちしてしまった」
というルーティンの崩壊が引き金になったようだ。

さらに、私の対応も完全に裏目に出てしまった。

寝る前、しくしく泣く娘を見て、元気づけるのと愛情を示す意味で、
「行けなかったらパパにLINEで予防線張っておきなよ」
と逃げ道をアドバイスし、ハグしてなでなでしてしまったのだ。

ライフハックのつもりで言ったのに、
「ハグからの撫で撫で」で安心しきってしまい、
甘えるスイッチが完全に入ってしまったのかもしれない。

その「親の優しさ」が皮肉にも幼児退行の引き金になり、
深夜の爆発へと繋がってしまった。

夫の「禁句」と、意図せぬファインプレー

朝になっても娘の叫びは収まらず、いよいよ出発の時間が迫る。

そこへ夫が放った言葉。

早くして! 間に合わないよ!

娘の特性を考えれば、これはパニックを加速させる完全な禁句である。

「ああ、これは今日もドタキャンで行かないパターンだな……」と
私は完全に諦めていた。

けれど、夫の戦略は少し違っていた。
夫が選んだのは、いつもの近場ではなく遠方の音響が良い映画館。

娘には場所も上映時間も伏せたまま、
実際のタイムリミットより1時間以上前から
「早くしないと間に合わない」
とプレッシャーをかけていたのだ。

そして、揉めている最中に夫がぽろっと口にした一言。

映画のあとに、ポケモンスタンプラリーできるでしょ

その瞬間、娘の空気が明らかに変わった。
「お風呂入らなきゃ!」と急いで浴室へ向かい、
あれほど泣き叫んでいたのが嘘のように身支度を始めたのだ。

JR東日本 ポケモンスタンプラリー2026 補足 

毎年夏休みに開催されるJR東日本のポケモンスタンプラリー。
今年の6駅達成賞品は、キャプテンピカチュウのフレンダピックとステッカーだった。
娘は2018年から参加しており、当時は6駅集めるとポケモンのパスカード(ネックストラップ付きのパスケース)がもらえた。
コロナ禍の中止を経て再開されて以降、以前に比べると賞品はやや見劣りするようになったものの、娘の中では「毎年絶対に集めなければならない」という収集癖のスイッチがしっかり働いているらしい。

娘にとっては、映画よりも完全にそのグッズこそが本命だったらしい。
あまりの現金さに私は心の底から呆れたが、
意図せず娘を動かした夫のファインプレーには感心した。

【その後】ケロッと帰宅した娘へ、冷静な釘刺し

夕方、大井町まで足を伸ばしてスタンプラリーを達成した娘は、
戦利品のグッズを手にしてホクホク顔で帰宅した。

深夜から朝にかけてのギャン泣きは何だったのか。

そしてそれに付き合わされた私は一体なんなのか。

帰宅後、娘は映画の感想を熱っぽく語り出した。
幼少期のマイケル・ジャクソンが父親から受けた過酷なしごきや理不尽な命令について。

「子どもにあんなこと言うなんて、父親がひどすぎる!」と本気で憤っている。

……。

数時間前、深夜に叫び声を撒き散らして
私の睡眠と精神を理不尽に削り倒したのは誰だっただろう。

つっこみたいけれど、面倒くさいことになるので
「へぇ..。」と受け流す。

機嫌が良いタイミングを見計らい、
「昨夜みたいな感情の押し付けをされるのはうんざり。
何度同じことを繰り返すの。自分の不安は自分で処理できるようにならないと」
と釘を刺した。

神妙な顔で「二度としない」と答えていた。
(まあ、どうせまたやるのだろうけれど)

【考察】親がブレずに境界線を引き直す理由

スクリーンタイムの制限をかけて生活を仕切り直したとしても、
子どもの自立は一直線には進まない。

親が少しでも気を緩めて優しく先回りしたり、
本人にとってハードルの高いイベントが迫ったりすると、
今でも月に1回くらいのペースで突発的な爆弾が投下される。

以前は娘のメンタルを心配し、
そして願いを込めて、
私の態度から読み取ってほしいと接してきた。

自我が芽生え、思春期に入り、学校に行かないことでの社会との関わりが減り、
それではバランスがうまくとれなくなった。

娘はわがままになり、自分の感情を押し通そうとする。

フォローするのをやめ、
自分の感情のコントロールがつかないときの責任は本人に引き受けてもらう。

娘の自立を促すためもあるし、私の今後の人生のためでもある。
淡々と境界線を引き直していくしかない。

一度言ったからといってすぐに変わるわけではない。
何度も何度も同じことを繰り返され、
そのたびに根気強く、ブレずに一貫した対応を積み重ねていきたい。

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